「同じ空の下で…」
亮太に誤解するなと言ったのに、こんな風に『はたから見て普通の恋人』みたいにされたら、さっき私が説明したのは一体何だったんだ…?
そんながっかり感と救われた有り難い気持ちが入り混じって、頭の中がごちゃごちゃしていた。
コンビニを出て、車の中…──
私は暫く言葉を発する事が出来ずに居たが、瞬がボソッと呟いた。
「艶香、愛されてたんだなぁ…。」
いや、違う。
それは違うよ、瞬。
「何で別れた?俺が原因じゃないって、言ってたよな?」
「うん、瞬が原因ではないよ。でも、電話の事では喧嘩はした。」
そして…乱暴されかけた。
「俺、良く事情は分からないけど…納得のいく別れ方だったのか?」
瞬がそんなにこの話に突っ込んで来るとは思わなかった私は、自分の弱さとか本音とかをつい、話し始めてしまった。
「よく彼は私を叩くんだ。そう、あの電話事件の夜も、玄関で頬を叩かれた。そして強引に…ベッドに押し倒された…。」
車のハンドルに、両腕を乗せ、その上に自分の顔をのせ、助手席を見るような格好で瞬は私の話を大きなその瞳で真剣に聞いてくれた。
「それは、昔からの事で、一度、二度の事じゃなかった。私が反論すると…叩かれた。いつしか私は、彼の顔色を見て・・・・話さなければいけないようになって居て…その事に疲れたのも…別れの原因…。私は彼の恋人じゃなく、きっと・・・・人形とかペットとか・・・・そういうのだったんじゃないかなって思い始めた。」
自然に…私の目の前が歪んでくるのが分かり、私は慌てて涙を拭いた。
「…ごめん。やだ、あたし、馬鹿みたい・・・・。」