「同じ空の下で…」

駅前───

スマホを手にして、画面を見て何やら楽しそうにしている瞬を足を止め、遠目から少しだけ眺めていた。

私が深く印象的だった大きな二重の子供みたいな無邪気さに溢れた瞳とそれに伴ってついているような、高い鼻。良く考えたら、日本人離れした、何とも整った顔立ちの瞬。
つやつやで情熱的な、形のいい唇。
意外に背は高く、逆三角形の背中。

だから、一見、駅でスカウトでもしそうな人にも…見えなくはない。
むしろ、ホストと言えばホストにも見える。
華がある人間とはかけ離れてるが、やはり人目を惹く男だと思う。

ボディバックを斜め掛けにして、相変わらずスマホを見ては時々腕時計に目をやって、きょろきょろと辺りを見回していた。

きっと『つやか、遅いなぁ~』とか、言ってるんだろな。





少し、口許を緩め、瞬の所に足早に近寄ると、相変わらず平静を装って、

「おまたせしました。」

と、声をかけた。

「遅いぞ~。」

そう柔らかい笑顔で言うと、さりげなく、一瞬の隙を掴むかのように私の手を引き、歩き出した。

はたから見たらきっと普通のカップルの姿だろう。


人と手を繋いで歩くのなんて・・・・何年ぶりかなぁ。



そんな事を思いながら、瞬の手を握り返す。


私の顔は、瞬に会った時からきっと綻びっぱなしだろう。
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