壊れかけの時計
―――と。
「まだかなぁ、神楽くん。」
愛海が信じられない名前を発したのだ。
「か・・ぐら、くん?」
神楽という名前に、私は動揺をしていた。
――だって、”あの人”と同じ名前なのだから。
私はまさかと、首を横にふった。
「あれ?まだ名前言ってなかったけ?」
彼女は首を傾げた。
「・・うん。」
嫌な予感がする。
なぜか、背筋がゾクリとするような感覚を覚えた。
放心状態の私に、彼女はさらに首を傾げた。
「花音・・どうかしたの?」
「・・ううん、ちょっと昔を思い出していただけよ。」
その嫌な予感に背を向けて、甘ったるいカシスオレンジを喉に流し込んだ。
―――その時、
ドアノブはガチャリと音を鳴らして開けられたのだ。