壊れかけの時計
隣の男女の会話に耳を向けながら、私は適当に左隣の男のつまらない話に相槌をうっていた。
ふと、時計に目を向けると
針はもう23時を指していた。
「(そろそろ帰ろう)」
愛海には悪いが、こんな居心地の悪い空間にいつまでもいれるわけがない。
ましてや、誕生日の日に。
トイレに化粧直しする時に帰っちゃえばいいよね。
「・・ちょっと、お手洗い行ってきますね。」
心の中で愛海に謝罪しながら、私は席を立った。
―――後ろで男が、ニヤリと意地悪く笑ったのも知らずに。