壊れかけの時計
「ねぇ、あの子うざくない?」
「あぁ、如月とかいう子でしょ?」
「ちょっと可愛いからって調子乗ってるよねー」
「見た?あの媚の売り方!」
「マジ笑えるよねー、」
「あーいう子、合コンにこないでほしいよね。」
―――どうやらトイレには、先着がいたようだ。
トイレの入り口で、私は小さく舌打ちをしてスマートフォンを片手でいじりながら女たちの嫉妬を聞いていた。
どうやら、今日の私の運勢は最悪らしい。
「(・・ほんと、バカばっかり。)」
そんなことを思いながらケータイから、今日交換したばかりの彼女たちのアドレスを削除していた。
所詮、社交辞令のアドレス交換。
子供じみた彼女らの嫉妬は、私の苛立ちを煽るのには十分だった。
「っていうかさー、・・・っ!」
さっきまであんなに下品に笑いながら話していた彼女たちが、私の姿を見て顔がさーっと青ざめていくのがわかる。
そんな彼女たちに極上の笑みを向けて、私はトイレに入った。