壊れかけの時計
そして、目を細めてながら私の頭を撫でた。
懐かしいその仕草に、鼻の奥がツンとした。
「・・・・さぁね、」
私が無表情でそういうと、彼はふっと笑って
「相変わらず、冷たいね。」
と、愛おしそうに私を見るのだ。
「まさか、―――迎えにきた、なんて言わないわよね?」
でも――私はもう、あのころみたいに純粋ではない。
この歪んだ自分の性格に、もう慣れてしまっているのだ。
それなのに彼は、
「そうだよ。――花音を迎えにきた。」
呆れる様子もなく私を見つめる。
そして私の腰を引き寄せて、優しく包み込む。
久しぶりに与えられた懐かしいぬくもりに、
「・・誕生日おめでとう。」
耳元で囁かれた低音ボイスに、ゆっくりと身を任せた。
再会の夜
(こんな誕生日も、)
(悪くない。)