壊れかけの時計
「・・・私、煙草を吸う男は嫌いなの。」
―――千影は別、だけれど。
悔しいから、そんなこと絶対に言ってやらない。
でも、千影はふーん、とそんな私を見透かしたように笑う。やっぱり私はこの男にはかなわないのだと、そんなことを思っていた。
「で、早く説明してくれないかしら?」
私が強気にそう聞くと、
「もう、頭の整理はお済みで?」
馬鹿にしたように彼が言った。
ちょっとムカついて舌打ちをしそうになったけれど、なんとかそれを我慢した。
「・・整理をしても、意味が理解できないので説明してくださる?」
少しだけ、嫌味ったらしく言ってみた。
そんな私の小さな対抗心。
いままでほっとかれていた私の、小さな対抗心。
「・・俺が、花音をここに引っ越させるように裏で手を回したって言ったらどうする?」
「は?」
・・・やっぱり、この男の言うことはなにもかも意味がわからない。私には理解不能だ。