壊れかけの時計


「俺、アメリカに留学してた。で、戻ってきたら花音と暮らしたいから不動産に手を回したってわけ。」

確かに、そう考えれば少しおかしかった。
だって一人暮らしの女子大生に3LDKの物件を勧める不動産はそうそういない。住むところなんかどうでもよかったから、ここの部屋にしたけれど・・・まさか、千影の仕業だったなんて。

―――それは百歩譲って納得いったとして。


「(・・アメリカに留学だなんて、聞いてない。)」


理由を聞きたかったけれど、なぜか聞いてはいけない気がして聞けなかった。

「・・納得いった?」

「・・・本当に一緒に住むの?」

「なに、そんなに嬉しいの?」

「・・・・・・・・あなたの思考回路が理解できない。」

「俺には、花音の思考回路がまるわかりだけどね。」


―――ダメだ、頭が痛い。
会えたのは、いいけれど・・なんかさらに性格が悪くなって帰ってきた気がする。

私は深い溜息をついた。

「はぁ、じゃあ空き部屋使っていいわよ・・・。もう勝手にどうぞ、私シャワー浴びてくるから。」

そういって立ち上がろうとしたものの彼のほどよく筋肉のついた腕によって引き止められていた。


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