壊れかけの時計
――私の気持ちを知ればいいのよ。
「…再会のキスも、許してくれねぇの?」
不機嫌な時。
言葉遣いが汚くなるのは彼の癖のひとつだ。
「…。」
ずっと黙って俯いていたけれど、そろそろまずいと思って目を向けてみると、千影もずっとこっちを見ていた。――当然、目が合うわけだけれど。
それだけなのに――胸がドキンと疼きだすのだ。
「……千影が、怒っている意味がわからない。」
余裕そうに装いながら、思っていたことをポツリと呟いた。
「…あ?」
――と、さらに男の機嫌は悪くなってしまったらしい。
もちろん、理由なんか私にわかりっこない。
「別に怒ってねぇし。」
「怒ってるじゃない!」
ついムキになって、声を張り上げると千影は眉をさらによせて、黙り込んでしまった。
「……怒りたいのはこっちなのに。」