壊れかけの時計


―――――――――――――――――…


……なんだろう、この感じ。
ふわふわ体が浮いてて、暖かい何かに包まれてる。

彼の、千景の匂いがする―――。

   お願いだから、
      もう私から離れないで



夢の中で、私は必死にそう叫んでいた。



「ん……、あれ…?」

私、寝ちゃってた?
目をこすりながら起き上がる。

周りを見渡せば、なぜか私はお気に入りの真っ白なベッドの上にいて、その横には千景がすやすやと眠っていた。

きっと泣き疲れた私を、ここまで運んできてくれたのだろう。


「……ありがと、」

小さな声でそうポツリとつぶやいて、彼の綺麗な髪の毛に手を伸ばした。


―――そして、


「―――――っ」


私は自分の右手の薬指にはめてある指輪に気づいたのだ。




   甘い同居人

(男はどうやら、)
   (婚約を破棄する気はないらしい。)



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