壊れかけの時計
再会の夜*
「みんな何飲む?」
「とりあえず生いく?」
「えー、私お酒飲めないよぉ」
暑苦しい狭いカラオケボックスの中で、若い男女が賑わっていた。
――・・結局、愛海に連れてこられたわけだけれど。
「(――つまらない人ばかりね、)」
妙な苛立ちを覚えていた。
「あ、花音ちゃん何か飲む?」
私を下心丸出しの目で見つめてくる男に、
「・・じゃあ、カシスオレンジにしようかな。」
誰だっけと思いながら、上目遣いで見つめてみる。
―――私の脳のデータ上、大抵の男はこれで堕ちる。
その男はやはり私の罠にぽとりと堕ちて、赤く頬を染めるのであった。
私はそれを心底気持ち悪いと思っていた。
―――本当、つまらない。