ケータイ彼女に恋して
呼び捨てでイイなんて言うって事は、親しくなりたいという気持ちの表れなのだろうか…
それとも、元々オープンな性格…?
「いきなり呼び捨ても照れクサいし、ミズキ…ちゃんで!
イイかな?」
それでも、わざわざ改まってこんな事を言い合うと、ホントに照れクサい。
とりあえずは、俺の頭の中でだけ呼び捨てする事にしよう。
"ミズキ"はウンと頷いた後、俺が差し出したメニュー表を受け取って、ウ〜ンと言いながら悩み始めた。
俺は、そのメニュー表を見ているミズキの顔を眺めていると、
ふと、ある事に気付いた――。
昔、好きだった子に似てる…
遠い昔、まだ小学生の頃だった俺が好きだった女の子。
名前までは、思い出せないし、どんな女の子だったかも覚えていない。
…けど、
猫の様に愛らしいパッチリとした目と、
頬に掛かる髪のラインと、その横顔、
笑った時に覗かせる八重歯。
似てる……
記憶はおぼろげだし、根拠もないけど、
雰囲気が似てる。
小学生だった当時と、今目の前に座るパッと見、20代の女の子の雰囲気が似てる、なんて可笑しいけど…。
「決まったよ!」
そう言って、バッと顔を上げたミズキのその表情が、
記憶の片隅にある女の子の表情と、
残像の様に重なって、
一瞬、目が眩んだかのような感覚に、俺は目線を反らした。
「…瞬クン?」