ケータイ彼女に恋して


あと一つ。

ミズキからの着信は、何故か俺の携帯電話の画面に、
"夏姫"と表示させた。

その疑問を尋ねる為に、俺は再びミズキへと視線をやった、その時―。


俺は目を疑った。



ポタッ、

ポタッ―…


目の前に座り、俯くミズキの顔から水が垂れている。

俺はそれを見ても、涙だとは思えなかった。

だから、天井を見上げて、何か垂れてやしないかとミズキの頭上を確認した。


何も垂れてはいない。

俺は目線を落とし、ミズキを見た。

するとミズキは俺を見ていた。涙を拭ったのか、はたまた涙なんて最初から流していないのか、

その後は見当たらず、俺は見てはいけないものを見たのかと…
そんな気持ちになった。

いや、多分俺の見間違いなんだろう。



何となく、切り出しにくい雰囲気ながらも、俺は尋ねた。


「ミズキちゃんからの着信があった時、俺の携帯には夏姫って表示された。

何で?」


俺はポケットから携帯を取り出し「ほら」、と言って、昼間の着信履歴をミズキに見せた。
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