ケータイ彼女に恋して


ミズキも、「でしょ〜。絶対そうだよ!」、そう言った―。


一応、3つの疑問の全ては拭われたし、つじつまも合う。
そう考えると、妙に納得した。


俺は店内の壁に掛けられている時計を見た。
時刻は8時過ぎ。
明日は仕事だし、そろそろ帰ろうかと思って、最後に一つだけ聞いた。


「ミズキちゃん、名前の漢字はどんな字?」


俺は、人の名前そのものが好き。
千差万別で。名付け親の気持ちや、その時に考えた漢字。色んな意味合いが含まれていて、名前はとても魅力的だ。

日本文学が好きで、国語が大好きな俺は、出会った人には皆に名前の漢字は?って質問する。今、目の前にいるミズキも例外ではない。


ミズキは、「私の名前は〜」と言いながら、カタカタと携帯を操作した後、俺にその画面に表示される文字を見せた。




―『七夕 瑞希』―



俺はその名前の字よりも、名字を見て驚いた。


「七夕!?…たなばたって読むの、それ…!?」


俺は自分でも分かる程に、目を大きく見開き声を上げた。


「珍しいでしょ?
日本に数人しか居ないんだよ」


そう言ってミズキは、ピースサインした手を突き出して、誇らしげな顔をしてみせた。
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