ケータイ彼女に恋して
『七夕になる?…それってなれるもんなの?』
少年には、少女の言うそれが理解できずに、更に大きく目を見開いて少女を見た。
『アハハ。瞬クン、七夕は、たんざくに願いごとを書くだけの行事だと思ってるでしょ?』
『違うの?』
『違うよ〜。七夕はね〜、一年に一回だけ織り姫サマと彦星サマが会うことができる日なの』
目を一際輝かせる少女の言葉とは対照的に、少年は『ふ〜ん』と、さも興味なさげに呟いた。
『一年ていう長い時間を2人は、忘れることなく別々にすごして、そして七夕の日に2人はアイを確かめ合う…
っていう中国のお話』
『中国の?ふ〜ん』
まるで興味なさそうに聞く少年を見て、少女は頬を膨らませながらも、それでも目の奥で輝く瞳は、
優しく少年を捉えている。
少女はスカートのポケットの中から、
水色のハンカチを取り出して、ブランコに座る少年の膝の上に置いた。
『なに?』そう尋ねる少年に少女は言った。
ほとんど沈んでしまった太陽より高い空を見上げて。
『私は織り姫サマだよ』
――
―…
…