ケータイ彼女に恋して


朝…。目が覚めると、俺はキリキリと痛むような頭痛に襲われ、
いつもよりも数回多く、叩くように顔を洗って職場へと向かった。

しっかり睡眠はとったから、寝不足なわけはないのに…

それでも消えない偏頭痛のような痛みに、耐えながら仕事をした。


そして、仕事も終わりいつものように休憩室で煙草を吸っていると、これまたいつものように大貴がやってきた。

眉を歪ませ、額を抑えていた俺を見て、大貴は「具合悪いの?」と顔を覗き込み心配してくれた。

それに対して俺は、「朝起きてからずっと頭痛が酷くて…」と、吸いかけの煙草を早々と消しながら答えた。


「悪い夢でも見たんじゃねえの?」

大貴は真顔で言った。
俺は、俯いたまま大貴の顔をチラリと見て、そのセリフを言うなら普通、笑いながらだろ…
そう思ったけど、

「夢は見てない」

ぶっきらぼうに答えた。


「いや、夢を見て覚えてるなんて事は、そうそうないから」

大貴は煙草を吹かしながら、冷静に言った。

「まぁ、それはそうだけど…」


俺は俯いてばかりだと痛みが増す気がして、頭を上げた。

俺の視線は大貴を捉えていなかったけど、視界からは、大貴が俺を見ている事が認識できた。

いつも自分の事ばかり話す大貴が、頭を抱えていた俺を心配してくれた事が、
なんだか嬉しかった。
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