ケータイ彼女に恋して

俺は少しだけ笑って見せて、
「ありがとう」と言った。

その言葉に大貴は、
「何が?」と、目を丸くさせた。


何気ない優しさこそが、一番優しいって感じる瞬間なんだな…

俺はそう思ったけど、大貴には言わなかった。


あ、そうだ。
日曜日に大貴に借りたテレカを返さないと…

俺は、ポケットから財布を取り出して、テレホンカードを大貴に返した。
「ありがとう。おかげで助かったよ」
その言葉に笑顔を付け加えて。


「あれって、何だったワケ?まさか携帯でも落としたとか?」


その的を得た大貴の言葉に、その時の気持ちがフラッシュバックした。


「そーなんだよ。携帯落としちゃってさ〜。大変だった」


「見つかったの?」そう尋ねる大貴に、「うん、何とか」笑いながら、俺は携帯電話を見せた。


すると大貴は、
「その携帯って、新機種だよね?ちょっと見せてよ」
そう言って、俺の手からケータイを奪った。

いつもなら、自分の手元から携帯が離れると何か不安になるけど、

今は頭が痛くて、大貴から取り上げる気力もなかった。


大貴はB型の力を発揮して、勝手に俺の折りたたみ式の携帯電話を開くと、笑いながら言った。


「なに、この待ち受け画面…?」
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