ケータイ彼女に恋して
「もう会う事はないよ」
「何で?その子にはもう他に男がいるとか?」
いつも横柄な態度で人と連まない大貴に、いつもの素っ頓狂で破天荒な大貴はどうしたんだ、
ヘコむなんて、らしくないだろ、という意味合いを込めて、笑いながらそう言った。
そして大貴は静かに答えた。
「もう死んじゃったから」
大貴はまるで自分を鼓舞するかのごとく、俺に笑顔を向けた。
「あ………」
俺は聞いてはいけない事に触れてしまったんだと、先ほど笑った俺自身を頭の中で酷く叱咤した。
「ゴメン…」そう言って俯く俺に、大貴は、「らしくねぇよ」と笑って見せた。
「だから……この髪は、俺の中にいるアキ…そのアキよりも好きになれた子が現れるまでは切らねぇんだ」
そう言って大貴は、
大貴"らしくない"満面の笑顔を俺に向けた。
思わず、アキなんて女の子の名前を大貴が喋ってしまったのも、内に秘めた感情の高ぶりからだろう。
だから、その笑顔が俺を切なくさせた。
「髪、…切れるといいな」
俺は大貴に呼応するかのように、笑顔で言った。
敢えて、
好きな子ができるといいなとか、
アキって子を超える子が現れるといいな、
何て言う表現はせずに、
髪を切れるといいな…
そんな言葉に変えた。
何故なら、大貴が気づいているかどうかは別として、
大貴の中のアキって子への想いが、違う形に変わらない限りは、その子を超えたなんて自分が認識できる子が現れる筈がない。
そう思ったから―…。