ケータイ彼女に恋して
そんな事を胸に秘めながら、心の中で「よしっ」と意気込む俺をよそに、
「はい!先に唄って!!」
と言ってミズキは、直接画面に打ち込んで選曲できるタイプのリモコンを俺に手渡した。
「ありがと…」
俺は差し出されたリモコンを受けとると、
迷うことなくアジカンのループ&ループを選曲した。
俺は、レストランやコンビニや、カラオケ…
どこに行ってもそうなんだけど、大抵店に入る前に、買うもの食べるものを決めている。
だから迷わない。
カラオケに至っては、最初に歌う曲はいつも一緒。
好きなものは好き。
嫌いなものは嫌い、
ハッキリしてる所なんかは、B型たる所以かもしれない。
日々迷う事と言えば、人生と恋愛…
カラオケボックスの室内に流れる空気が、曲の始まる静けさにより打ち消され、
リズミカルなドラムの音と共に、イントロが始まった。
俺は、カラオケが大好きで人前で歌うことには慣れていたけど、
右隣りをチラッと見ると、ミズキは静かに音にのり、
流れる重低音が部屋と俺を振動させたような感覚に…
妙な緊張感を誘った。