ケータイ彼女に恋して


唄ってる最中は、
歌詞が映し出される画面を食いいるように眺め、

流れるテロップを目で追った。


曲の最後の音が、フェードアウトするように消えていき、空間を沈黙が襲う。

歌い終わった後の爽快感と、一瞬の恥ずかしさが訪れる瞬間。


「ミズキ、曲入れた?」


たまらず、俺は右隣に座るミズキに目をやって口を開いた。


「あ、ごめん!まだ入れてない」


ミズキはそう言って、パラパラと歌本を捲る。


「瞬クン、誰が好き?」


「…えっ!?…だ、誰って俺は…」


慌てて言葉に詰まる俺を見てミズキは、

「なに、どもってんの〜?好きな歌手だよ?瞬クンの好きな」

と、クスクスと笑った。


好きな人は誰?…
なんていきなり聞かれたかと思った…。

こんな薄暗い密室じゃ、ちょっとした一言がムードある言葉に自動変換されるようだ。

勘違いしてる場合じゃないぞ、俺は。

浮き足立ってたら、見るものが見れない。


「あ、あぁ…好きな歌手かー。
最近で言えば、

YUIとか、いきものがかりとか…」
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