ケータイ彼女に恋して

俺は、携帯電話をポケットから取り出し、開くと、

画面に映るナツが描いたイラストを見て、

小さく意気込んだ。


ガチャリ…。


部屋の扉が開くと共に、携帯を耳に当てたままのミズキが戻ってきて、

「ごめんなさい」
と、眉を下げながら言った。

俺は、そのミズキの言葉が自分に対してなのか、まだ通話中の電話の相手に対してなのか分からずに、

無言でミズキを見た。


「瞬クン、この前瞬クンの携帯を渡したリエっていう子、覚えてる?」


ミズキは携帯を耳から離して、俺に対しそう言ったので、


「あぁ。あの色黒の…?」


ミズキはその言葉にコクンと頷いたが、人差し指を口元に当てた。

…どうやら、あの色黒のリエって子に、

"色黒"は、禁句らしい。


「その…リエがね?

街に来てるから、合流してもいいかな?って…」


俺は、一瞬だけ躊躇したけど、断る明確な理由もなく…


「いいよ」


ウンと頷きながら、そう言った。
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