ケータイ彼女に恋して
「瞬クン?」
不意にボーっとしていた俺をミズキが呼び覚ました。
「あぁ、ゴメン」
俺はそう言いながら、煙草の火を灰皿で消した。
「変わってないね…」
ミズキの呟く言葉は、歌ってなくても常に流れ続ける有線の音と重なり、
俺は思わず聞き返した。
「えっ?何て?」
「ううん、何でもない…」
ミズキはそう言って、視線を外した。
「ミズキは?
ミズキは仕事何してんの?」
別に、大した興味がある訳でもないのに、間を埋めるようにして俺は口を開いた。
「私?私はねぇ…
ネイル関係の仕事やってるよ。」
ミズキは打って変わったように、目を輝かせ、綺麗にアートされた爪を俺に見せながら、仕事の魅力を語り始めた―。
ミズキの仕事は、どうやらモデルのヘアメイクや、ネイルケアを担当してるらしく、雑誌等に掲載される撮影のアシスタントをやってるらしい。
聞いた感じでは、煌びやかな世界に生きてるような、
そんな印象を受けた。
勝手な俺の先入観かもしれないけど…
意気揚々と喋るミズキは輝いて見えた。
手振り身振りを交え、俺にヘアメイクやネイルアートの魅力を語ってる様は、
何とも言えず、愛らしく映った。