ケータイ彼女に恋して
俺は、ミズキに対して少し興味を持ったのか、
それとも、喋り始めると止まらない、無邪気に笑うミズキのその笑顔に、
見惚れたように、聞き入った。
色黒の…、
いや色黒は禁句らしいけど…、リエという女の子も、ミズキと同じ仕事をしているらしく、親友なんだとミズキは言った。
それからミズキは、俺が聞いてないことまで、ペラペラと話した。相槌を挟む間も与えない程に。
望む望まないにしろ、俺はミズキの色んな事を知った。
まず歳は俺と同じ25で、俺の住む町とは一つ離れた町に住んでいて…、
好きな食べ物はオムライスとハンバーグ。好きなタレントは、大沢たかおと元EXILEの清木場俊介。
スヌーピーが大好きで、部屋には誕生日に貰ったスヌーピーのぬいぐるみが沢山あるんだとか……。
話に脈絡はなく、どんな展開で、そんな話に至ったのか、俺の頭は一つ一つを整理していくだけで精一杯だった。
自分を知って欲しいのか、興味を持って欲しいのか…
わからないけど、俺は自分自身の事を聞かれなきゃ話さないから、
ミズキの見せた行動は、俺には魅力的に思えた。
俺には真似できないから…。
自分を晒すというのは、ある種、勇気がいる事かとも思う。
ミズキは喋り疲れたのか、満足したような笑みを浮かべ、
「喉乾いたね。何か頼む?」
俺の空になったグラスを見てそう言った。