ケータイ彼女に恋して
第一章・ハルかなる〜

日常


「よぉぉし!今日の仕事も終わりっ!」


本日の仕事を終えると、一目散に帰り支度を始める。

一日の中で、一番早いスピードで動いてるんじゃないか…

そう思う程、一心不乱に明日の準備をしながらも、頭の中はアレの事でいっぱいになる。


「お疲れ様でした」


帰り際に、笑顔で職場の上司に挨拶をする。

も、上司を見る目は、視神経を通して脳に伝えかける事はなく、

返しの「ご苦労さん」と言う言葉も耳には届かない。


そもそも半ば駆け足で歩いてる為、上司が言葉を言い終わるより早く、その姿を消している。



工場の正門に設置されてある、出勤時と退勤時に通すカードリーダーの前で立ち止まると、慣れた手つきで、
ピピピピッと指ではなくカードでボタンを押していく。


残業1.5h…


今日は少し遅くなったな。

そんな事を思いながらも、カードをスッと上から下へとスライドさせる。

ピッ。

『お疲れ様でした』

機械が感情のない労いの言葉を発すると同時に、走って正門を出て、
工場を後にした。


その瞬間から、
頭の中からは仕事の「し」の字も消え、180度切り替わる。


早く帰って、やりたい…


もう、その事で頭がいっぱいだ…
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