ケータイ彼女に恋して

―――。

……。


梅山ナツの小説大恋愛を、俺は、時の過ぎゆくのも忘れる程に読み更けった。
完結まで読み返したのは恐らく三度目。


…初めて読んだ時は、ただ"面白い"と感じただけだったのを覚えているけど…

幾度となく読み返す内に、段々と俺の中で違和感のようなモノを感じ始めた。


物語は高校生の話。


じゃあ、梅山ナツは高校生なのか…


違う。

それは安易過ぎるし、第一高校生の描ける内容ではないように思える。

それに、読者に対する真摯な対応と、受け答えの手際良さ。

高校生のイメージとは…違う。


ヒロインの遥は高校生で、恋愛に対する純粋な気持ちを薫にぶつけている。

その人物描写が余りにも的確で、かつ簡単にイメージを湧かせる為に、

最初は"勝手"に梅山ナツは高校生だと思った。高校生でなくても、20代前半だと…

そう感じた。



だけど…

この…頭の中でうごめく違和感は何だ……?



…――この時に生まれた違和感の答えと、梅山ナツの描く作品に隠された

"メッセージ"を…


俺が理解できたのは、もう少し先の事だった――…。
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