ケータイ彼女に恋して

少女の答えにあからさまに困惑の顔を見せる少年。


ブランコを漕ぎながらも少女は、振り返って少年を見つめ、こう言った。


『…ないでね。』


キィコ、キィコとブランコは"寂れた"音を鳴らす。

その音で少女の声が聞き取れなかった少年は、耳に手を当て聞き返した。


『みっちゃん?何て?…』


少女は少年を見つめる視線を戻すと、

目の前の大きな夕日に向かって叫んだ。



『忘れないでねーっっ!!』


ビックリして、カラスが逃げちゃう程に、

大っきな声で。


まだブランコを漕ぎ続ける少女の、

表情の見えない顔から流れ落ちたソレが、

風に乗って、少年の頬に舞い降りた。


凄くしょっぱくて、それでいて凄く甘い夢だった……


――――。
< 60 / 164 >

この作品をシェア

pagetop