ケータイ彼女に恋して

細身で色黒の店員は、俺の言葉を理解したのか、メニュー表を指差す写真を見て理解したのか定かではないけど、


「かしこまりシマシタ」


と、片言の日本語で返事をして去って行った。

隣りから、クスクスと聞こえる。

どうやら、あのインドカレーの店員に対して笑っているらしい。


注文の品が届く間、梅山ナツ改め、"ナツ"でも見ていようと、携帯電話をジーンズの左ポケットから取り出した。

呼び名を改めた理由は、自分の中だけでも、敢えて呼び捨てにした方が親近感が湧くと思ったからだ。

右ポケットから、煙草とライターを取り出し、火を灯そうとした時、テーブルの上に灰皿がない事に気付き、

手招きで店員を呼んだ。


「すいません。灰皿貰えますか?」


駆けつけたのは先程の色黒の店員、細身の…


「あの、灰皿を…」


明らかに俺の言葉を理解出来ていない色黒の店員は、困ったような顔をした。

困るなぁあ…!!

そんな顔されると、俺の方が困る!!


灰皿…灰皿…
英語で何て言ったっけ…!?…英語なら万国共通だろ……
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