ケータイ彼女に恋して
俺は店内をキョロキョロと見渡した。
日曜の真っ昼間だけあって、相変わらず客で賑わっている。
俺は、いつも小説の閃きや発想が頭の中に浮かんだら、ところ構わず携帯電話にメモするようにしている。
勿論、忘れないようにする為だ。
だけど…
俺は隣りにいる女の子2人組を横目でチラリと見た。
どこからそんなに会話の話題がでてくるのかと呆れる程、耳をつんざくような高音でキャピキャピと話し続けている為、とても集中できそうもない…
俺は、集中して何かをする時は無音じゃないとダメなんだ…
ましてや、小説を書く時なんて特にそう。だから書く時はもっぱら家だし、テレビは点けっぱなしで音だけ消してる。
俺は携帯電話のメモの欄に
"中国語"とだけ記して、携帯を閉じた。
これは、どうしても書けない仕事中や、時間のない時に使う必殺技で、通称一言メモ。
うん、そのまんまだけど…一言メモさえ残しておけば、忘れる事はない。
中華丼から立ち込める湯気と、ラーメンから香る匂いに、
腹が空いていたのを思い出し、やっとこさその視線は料理を捉えた。
「いただきます」
俺は、むさぼりつくように豚骨ラーメンをすすりながら、
早く落ち着ける静かな場所に行き、閃きを忘れない内に、まとめないとなぁ、と思っていた――。