ケータイ彼女に恋して
俺はペロリと料理を平らげると、最後に呑み込んだ中華丼のメインディッシュ、うずらの卵が喉を通るよりも早く、席を立った。
ふぅ〜、旨かった。やっぱりここの中華丼は絶品だ。
って、余韻に浸ってる場合じゃない…!!
急いで出ないと。
…おっと、危ない危ない…
財布がテーブルの上に置きっ放しになっている事を思いだし、引き返した。
戻る際、不意に2人組の女の子の内の一人、色白の女の子と目が合った。
…やっぱり可愛い…☆
…なんて、ほんわかしてしまった自分にまた、ブンブンと首を振って戒めると、財布をテーブルから取った。
俺は梅山ナツが好きなんだ…!!
…こんな事は決意なんかで固めるもんじゃないけれど、
およそ、一年半ぶりに訪れた恋心を、自分の中で大事に育てていきたいって思ってるんだろう…
別に、梅山ナツとどうかなりたい訳でもない…筈なのに、妙に操を立てている俺自身、ただ満足していたいだけなのかもしれない…
"恋っていう感覚"に…
そんな疑問を感じながらも、
去り際―、
少しだけ気になって、視線だけ流すと、
色白の女の子は、まだ俺を見ていた。
その表情に、不覚にもドキッと心が音を鳴らした―
何て表現すればいいんだろう…
口元は緩み、笑顔を向けているにも関わらず、その驚いたかのような丸い瞳、それでいて物憂げな眉の角度…
何だ……!?…その形容し難い恍惚とした表情は…?
視線が重なったまま、そのまま立ち止まる訳にもいかず、俺はレジへと向かった―。
会計を済ますと、悶々とした気持ちを置き去るように足早に、店を後にした――…。