ケータイ彼女に恋して
店を出るとすぐに、煙草を口にくわえ、これから何処に向かおうかと、
吐き出す煙を追いかけながら空を見渡した。
うーん、天気がいいな…
…良すぎる。
こんな…雲一つないような空が晴れ渡る、日曜の真っ昼間に、
家にひきこもるのは、気が引けるけど…
落ち着いて、考え事が出来る場所は、家ぐらいしかないし…
そう思いながらも、足は早くも家路へと歩みだした。
何せ、店の中華料理屋から家まで歩いて数分…
煙草の火種がフィルター近くまで届く頃には、既に家に辿り着く――。
キィィイ…。
一人暮らしの寂しさを表すかのような、寂れた音を立てながら、玄関の扉を開けた―。
出がけには、鼻歌混じりに唄っていたこの口も、今は堅く閉ざされている。
先程、店で閃いた事を忘れない為に。
閃いた事…
それは…
…え〜と、何だっけ…?
そうだ、携帯電話。
こういう時の為に、携帯にメモしてるんだよな、、
さすが俺。
携帯電話を取り出そうと、左ポケットに手を突っ込んだ。
…ん?
スルリと、ポケットの奥底まで指が届き、思わず冷や汗と共に声を上げた―、
「…ケータイがないっっっつ!!!?」