ケータイ彼女に恋して
俺の携帯電話の行方―。
一、色黒の新人店員、通称インドカレーがパクった。
一、俺の隣の席に座っていた女の子2人組が持ち去った、いや、拾ってくれた。
一、その後に座ったさっきの中年男性の胸"ポケットの中"。
何故だか、どれもヤバいぞ…!
携帯電話なんて、今の世の中、個人情報の宝庫だからな。携帯電話を覗けば、その人間の人と形(なり)、何に興味を持ち、どんな趣味を持つか…
全て解ると言っても過言じゃない。だから、もしも目の前に携帯が落ちてたら、少なからず覗いてしまうんじゃないか…!?
それこそ興味本位で。
ヤバいなぁ。
覗かれたら、俺の拙い小説や、自分で録音してみたカラオケの練習風景の動画や、ナツの為に書いてる途中のラブレター小説とか…
見られたら、こっぱずかしいぞ…!
まぁ、小説はどうせネット上に公開するんだけど、それでも身近な人に読まれたりする恥ずかしさとは違うからなぁ…
って、俺は呑気に恥ずかしがってる場合じゃない…!
早く探さないと。
いや、待てよ。
探すってどこを探すんだ…?店にはなかったし、家から店までの道中も走りながら、確認したし…
て事は、さっきの3パターンしか答えはないよな。
……
恐らく、3つ目はないな。もしも胸ポケットに忍ばせていたとしても、持ち主が携帯を探しに来たら、「あぁ、忘れ物を見つけて、後で届けてあげようと思い、拾っておきました。私みたいな善人に拾われてよかったですね。アッハッハ」とでも言えば、切り返せるし、
もしも、ドキリとはしながらも隠していた場合に、俺が身体検査までするような奴だったり、その場で俺が、他の電話で着信を鳴らしでもして、見つかった場合には言い逃れできない。
…だから、3つ目のあのオッサンが持っている…はないな。
着信を鳴らす…
?…あ、そうか。
焦って、肝心な事を思いつかなかった。
公衆電話から、自分の携帯にかけてみればいいんだ…