ケータイ彼女に恋して

公衆電話の受話器から聴こえた言葉に耳を疑った。


『サークルK!?

サークルKって…あの中華料理屋の目の前の!?』


『だから、そーだって言ってるじゃん!!早く来ないと、私も暇じゃないんだからぁ〜、

帰っちゃうよ?』


『あー、ゴメンゴメン!!…今からすぐ向かうから、待ってて貰える?』


最後に、「早くね」と、受話器の向こうの女の子が酷く投げやりに告げると、

俺は電話を切って、急いでサークルKへと向かった。



あの声の感じだと、少し遅れると本当にいなくなってしまいそうな気がして、全力で走った。

サークルKに着いた俺は、店内を覗くよりも早く、駐車スペースの車輪止めのブロックに座り込む女の子を発見した。


ハァ…ハァ…よかった…まだ居た…


息を切らしながら近付く俺に、

"色黒の"女の子が気付いた。


色白か色黒か、どっちの女の子か電話じゃ解らなかったけど、その姿を見て、

ホッとしたのとガッカリした気持ちが交錯していた…


「えーと、

拾ってくれた人だよね?…ありがとう…ございます」


側まで近寄り、上から見下ろすのも悪いと思って、色黒の女の子の隣りに座った。

というか、息も切れ切れだったので、とにかく座りたかった。隣りとは言っても、一つ隣りのブロック。


「はい、コレ」


息を切らす俺を笑いながら見た彼女は、俺の携帯電話を左手で差し出した。

「…ありがとう」

そう言って俺は、およそ40分ぶりに、自分の携帯を手にした。


よかった…

ホントよかった…

一時は、

サヨナラ俺のアバンチュールとか、
サヨナラひとナツの青春、

…なんて思ってたけど、

……助かった―。
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