ケータイ彼女に恋して
ナツとは、作品を読んで以来、何度かメールを交わしていた。
いつも他愛もない話。
それでも楽しくて、嬉しくて、
凄く恋しくて…
いつも気持ちを抑えるのに必死だった。
歳はいくつですか?
どんな外見ですか?
どこに住んでますか?
好きな事は何ですか?
好きなタイプはどんな人ですか?
ナツは本当はどんな女の子ですか?
数え上げればキリがない程に、聞きたい事がたくさんあった。
でも聞けなかった。
聞いちゃいけない気もした。
だってナツは、プロフを載せていないんだから、知られたくないんだと思ってたから。
それと、俺自身が聞くのが怖いという気持ちもあった。
目に見えないモノに恋して、
真実を知って、一つずつイメージと違って、
その果てに、気持ちが消えてしまうかもしれない、
なんて、考える自分が嫌だった。
そして、それはきっとナツも一緒なんだって、
そう思ってた。
恋しくて、恋しくて…
堪らなかったから、
聞けなかった。
何がナツにとって大切なのか、それに気づけないまま、
この気持ちが消えるのが嫌だった―…