ケータイ彼女に恋して
昨日の今日だ。忘れる訳がない。
『ミズ…キ?って、昨日俺の携帯拾ってくれた子だよね〜?』
『…ハイ』
電話の向こうの声は静かに肯定した。
『………何で…
俺の番号知ってんの?』
『………』
俺の言葉にミズキという女の子は、あからさまに無言になる。
聞きたい事もあったけど、ここは大人として礼儀を通さないと駄目だと思った俺は、言葉を続けた。
『えと、あの…携帯拾ってくれて、ありがとう。おかげで助かりました!』
『ハイ…よかった……です』
しどろもどろな返事に、俺の疑問は拭い去れない。
この子は何だ?
リエという女の子も変なら、このミズキって子も変だ……
『あの…今晩…会えますか…?』
『えっ!?』
予期せぬ言葉に俺は耳を疑う。
『いやっ、無理にとは言わないので、もし、お暇なら…』
数々の疑念がありながらも、
会えば全て分かるんじゃないか…
そう思って、こう答えた。
『うん。そうだな〜、拾ってくれたお礼もしたいし、今晩会おう、いや…会いますか?』
『ハイ…』
その後、場所と時間を取り決め電話を切った。
ミズキという女の子は、終始淡々と喋っていたように聞こえ、俺には深く困惑の思いが残った―。
が、会えばそれは拭われる。
そう思っていた。