ケータイ彼女に恋して
10分程過ぎた頃、店の前から見える道路を挟んだ交差点の向こうから、
一人の女の子が歩いて来るのが見えた。
ミズキという女の子だろうか…?
歩いてくるにつれ、姿形がハッキリとしてきた。
遠目でも分かるオレンジがかったショートカットの髪。
桜色のホルターネックのキャミソールに、清潔感溢れるオフホワイトのデニム。
肩にはショルダーバッグを携えている。
何ともカジュアルで、それでいて、
夏らしいスタイル。
まぁ、まだ春も終わってないんだけど。今の気候には適してる。
俺が目を奪われている間にも彼女は交差点を渡りきり、俺の近くまで来ていた。
えっと…
思わず、あたふたしてしまうダサい俺。
その姿を見て彼女は笑顔で口を開いた。
「こんばんは。遅くなってゴメンなさい。
…ミズキです」
その挨拶に俺は、店外添え付けのスタンド式の灰皿に慌てて煙草を擦りあて、
ミズキという女の子の元へ歩み寄った。
「こんばんは。
携帯拾ってくれて、ホントにありがとう。
俺は…瞬。
青葉 瞬です」
その俺の言葉に、ミズキという女の子は、
ニッコリと微笑んだ―。