ケータイ彼女に恋して
店のスポットライトに照らされ、ハッキリと映った彼女の笑顔は…
とびきり可愛くて…
俺は何だか少し戸惑ってしまった。
「立ち話も何だし、店…入ろうか?」
俺は戸惑いを隠すようにして、彼女を店へと通した。
カランコロン―。
店の扉を開く際に鳴る鈴の音は、健やかな気分の時も、焦って慌てふためいてる時も、
ちょっとばかり戸惑ってる今も、
変わらずに、店へと誘う。
まるで、今の俺をあざ笑うかのように、冷静な、いつもと変わらない空気と店内の光景が俺に飛び込んでくる。
「どこに座ります?」
さらに冷静な…
ミズキという彼女は、俺に尋ねながらも店内を見渡している。
しっかりしろ!俺!
男の俺がリードしないと駄目だろっ!!
そんな事を思いながらも、
俺は続くように店内を見渡し、客付きはさほど良くないにも関わらず、あまり客の寄り付かなそうな、角の座敷の席を選んだ。
ドクン…ドクン。
女の子をエスコートして歩くなんて、何ヶ月ぶりかの事で、正直緊張する。
畳の座敷へと靴を脱いで上がる際、不意に彼女と重なり、香水の甘い香りが俺の鼻を掠め、
理性を揺さぶられた。
俺はブンブンと首を振りながらも、
もし隣りに居るのが、この前の色黒のリエっていう女の子だっとしても、俺は同じように動揺していた筈だ、これは女の子と接する事自体、久しぶりだから緊張しているんだ、
断じて、色白の…ミズキっていう女の子だからって訳じゃない…!!
そんな風に自分に言い聞かせていた――。