Storm -ただ "あなた" のもとへ-
1.嵐の前の静けさ
*
夜が迫っていた。
部屋の中は、シフォンのような薄闇に包まれていた。
窓辺の長椅子の後ろに立つ。
森は黒いシルエットになり、池で泳いでいる白鳥はオレンジに染まっている。
そして見渡す限りの畑は黄金に輝いていた。
「嵐が来るな」
空の彼方に黒い雲が浮かんでいる。
長椅子に向かって言葉を落としたが、返答はなかった。
ふっと空気が動いた。