Storm -ただ "あなた" のもとへ-
1.嵐の前の静けさ

   *

夜が迫っていた。

部屋の中は、シフォンのような薄闇に包まれていた。

窓辺の長椅子の後ろに立つ。

森は黒いシルエットになり、池で泳いでいる白鳥はオレンジに染まっている。

そして見渡す限りの畑は黄金に輝いていた。


「嵐が来るな」


空の彼方に黒い雲が浮かんでいる。

長椅子に向かって言葉を落としたが、返答はなかった。

ふっと空気が動いた。
< 1 / 448 >

この作品をシェア

pagetop