Storm -ただ "あなた" のもとへ-
その顔を綺樹はまじまじと見つめた。
フェリックスは窓辺に立つ綺樹の様子をちらりと見てから、剣を壁に戻し、面を台に置いた。
「ユーリー・アンスネス?」
名前を呼ばれてユーリーは顔を向けた。
空色の瞳。
「もしかして、君がアヤナ?」
つかつかと歩み寄り、手前で止まった。
彼が何を待っているのかわかって、綺樹は手を差し出した。
ひざまずき、手の甲に口付けをする真似をする。
「なぜここに?」
まだ驚きが冷めやらぬ様子で綺樹は問いかける。
「ええと」
ユーリーは綺樹の手を握ったまま、フェリックスへと振り返った。
フェリックスはタオルで汗を拭いていた。
「私の友人だ。
休暇で押しかけてきた」
「あ、失礼だね。
ちゃんと行ってもいいか聞いたじゃないか」
「空港についてから、電話をかけて、聞いたといえるか?」
「それは違う。
空港に着いたんじゃなくて、空港からベルリンに戻ろうとして、君がここにいることを思い出したんだよ。
やっと演奏旅行も終わったことだったしね。
久しぶりに顔を見たかったんだよ」
茶目っ気たっぷりだ。