Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

方法は簡単だ。

わざと忘れた書類をロビーまで持って来てもらった。

そこへ暁子へ客が来ていると受付から内線を出させた。

降りてきた暁子は受付に聞くが、受付は内線など出していないという。

そして鉢合わせ。

綺樹はロビーの空中を渡っている廊下に立って見下ろしていた。

手摺りに両肱をついて寄りかかった。

先に見付けたのは涼だ。

二人とも驚いてから立ち話をはじめた。

やがてソファーに席を移して盛り上がっている。

綺樹はただ眺めていた。

自分と一緒にいる時は何だか小難しそうに、愛想のない顔をしているくせに。

涼の魅力。

色気だろうか。

色が付いていたら、暁子を取り巻き、周囲に居る人までも毒しているのが見えた
だろう。

ふっと息を吐いた。

これではのぞきだ。

趣味が悪い。
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