Storm -ただ "あなた" のもとへ-

手摺りから離れると、両手をポケットにつっこんで歩き出した。

今夜は家に帰りたくない。

涼の顔を見るのが嫌だった。

にこやかで晴れ晴れとしているに違いない。

あの前向きの雰囲気が全開だ。

暁子のことを語るとは思えなかったが、饒舌にその日の出来事を語ってくれるだろう。

こっちは連日タイトなスケジュールで疲れ切っているというのに。

少し鈍くなりたかった。

街中で車を止めさせると、夜の街を歩き出した。

涼はまた時計を見上げた。

遅くなるときは電話がくる。

夕食がいらない場合は必ずだ。

いらいらとオーブンのドアを勢い良く閉めた。

男か?

どこにいるんだ。

あいつの持っている携帯はGPSがついているか?

付いていたって、その探索方法を知らない。

それよりも電話をかけてみる方が先だった。
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