Storm -ただ "あなた" のもとへ-

涼は調理台の引き出しから番号のメモを取り出そうとすると、玄関のドアが開く音がした。

がさがさという、こすれる音もする。


「おい」


綺樹はドアに寄り掛かったまま座り込んでいた。


「どうした」


驚いて近付き傍らに膝をつくと、アルコールの匂いがする。


「酔った」


うつむいたまま低い声で呟く。


「気持ち悪い」


ずるずると上体を倒して額を膝につけた。


「おまえ」


涼は綺樹の腕をつかんだ。


「なにやってるんだよ。
 まだ胃だって完全じゃないんだぞ。
 それを」


返事はなく、呼吸にあわせて背中が上下に揺れている。

涼はもう少し言おうと口を開きかけると、綺樹の呼吸が不規則になった。

手で口を覆う。
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