Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「吐きそうなのか?」


涼は抱え上げるとキッチンのシンクへ屈み込ませた。

体をひくつかせたが吐かなかった。


「吐いてしまえよ。
 楽になるから」


綺樹は目を閉じたままだった。


「本当に、世話が焼けるよな」


涼は指を無理遣り綺樹の口につっこんだ。

液体しか出てこない。

綺樹はぼんやりとして水音を聞いていた。

頭の中ががんがんする。

何かを叫びそうになる。

悲鳴だろうか。

体から何かが突き破ってこようとする。

綺樹はうめいた。


「大丈夫か?」


耳元の低い声に綺樹はまぶたを震わせた。

首に抱きつきそうになる。

抱いてほしかった。

頭が一つ痛み、意識がずんと沈んだ。
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