Storm -ただ "あなた" のもとへ-
涼の腕に綺樹の体重が一気にかかった。
涼は小脇に抱えて引きずるように食堂を通り過ぎ、プライベート用の居間にあるソファーに横にした。
キッチンから水のグラスとタオルをもってくる。
「ほら、水」
涼は唇に押しつけた。
綺樹はうっすらと目を開けると受け取って、ゆっくりと飲みだした。
空になると代わりにタオルを渡す。
「サンクス」
弱々しい声で言葉をもらした。
タオルを握り締めたまま目を閉じる。
「こら、寝るなよ。
顔を拭けって。
その後、ベッドに連れてってやるから」
綺樹は目を開けるとぼんやりと宙を見つめている。
「ああ、全くおまえは世話が焼けるな」
涼は綺樹の手からタオルを取り上げると、綺樹の顔を拭こうとした。
その手を綺樹は自分の手を重ねて止めた。