Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
綺樹は片手で頭を支え、もう片方の手で書類をめくる。
併せて端末の画面をスクロールさせた。
支えていた手で頭をいらいらと掻いた。
どう手を打とうとも駄目だ。
暁子はしくじった。
綺樹はため息をついた。
これは飛ばされる。
書類を閉じると机の向こうへほおり投げた。
涼は一緒に行くだろうか。
両肱をついて手の甲に額をつける。
ならば、最後に寝てもいい?
自分に問い掛けた。
口元を歪めて笑った。
答えはわかっている。
noだ。 このまま、そっと。
ここまで頑張って距離を保ったじゃないか。
やっと、なんとか、なりそうなんだから。
ドアがノックされてグレースが顔を出した。
「綺樹さま、会議のお時間です」
「ん」
綺樹は画面を消す。
もうその時かもしれない。