Storm -ただ "あなた" のもとへ-
ユーリーは売れっ子のバイオリニストだ。

曇りの無い金髪に、明るい碧眼。

甘い顔立ち。

しゃべれば陽気でユーモアたっぷりだが、その演奏は繊細で切なげだ。


「友人」


綺樹は鸚鵡返しに呟いてから、フェリックスに顔を向けた。


「おまえ。
 バイだったの?」


ユーリーが噴出して、肩をゆすって笑い出す。

ユーリーはゲイだ。


「フェリックスが。
 フェリックスが、バイ」


腹を押さえて笑っている。

どうも笑い上戸でもあるらしかった。


「大学が一緒だったんだ」


フェリイクスは冷ややかな目でユーリーを一瞥して、水を飲んだ。
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