Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「ヘリは屋上にいる?」
表情を引き締めて綺樹は部屋を飛び出した。
飛行機の中で綺樹はグレースにやっと詳細を語ると、やはり渋い顔をされたが、構ってはいられなかった。
さやかに告げ口をするならすればいい。
「ウルゴイティの名前を使って。
最大限に利用して。
インドの首相に電話を繋いで。
前にパーティで話したことがある」
涼への対応にあらゆる手を尽くす。
ベストを尽くして駄目ならば。
綺樹は病室のドアを一つ息を吸って開けた。
顔が一回り小さくなったような気がする。
生きている人の顔色とは思えなかった。
綺樹は額にそっとくちびるで触れ、傍らの椅子に腰をおろした。
丹念に見つめる。
涼の病状を把握し、待遇を確認し、金を渡したのだから、すぐさま立ち去るべきだと思っていた。
関係の切れた男なんだから。
わかっていても動けなかった。
不意に涼の目蓋が震えて上がった。