Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
砂を噛むような毎日。
別にこれが初めてではない。
涼と出会う前だってずっとそうだったし。
その毎日が当たり前に感じてくる。
「ねえ、さやか。
なぜそんなに私に結婚を強要するんだ?
あなたがすればいい、とは言わないけど」
さやかが結婚相手を選ぶのは、一国の女王が相手を選ぶのと同じぐらい、難易度が高い。
「あら、だって。
あなたが安定しないと、ダバリードに差し障りがあるもの」
さやかはさらりと返した。
「今は不安定だって?」
「そうよ」
苦笑いをしていると、あっさりと言われた。
「そうかな」
さやかはじっと見つめた。
「良くなってきてはいるようね。
でも私が望んでいる状態ではない」
「そう」
さやかが望む状態とは“無”ということだろうか。
感情の無い、正確に動くアンドロイド。
そういう風になりつつあるのを感じていた。