Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「大学が一緒。
ということは、歴史学を出た有名なテノールの彼とは知り合い?」
綺樹の問いにユーリーは誰のことかすぐわかったらしい。

「うん、まあね。
 紹介する?」

「機会があったらお願いする。
 で、彼もゲイ?」

「それは個人的な情報だ。
 僕からは言えないな。
 今度、本人に聞いてみてよ」


ウィンクしてにっこり笑った。


「じゃあ、そうする」


綺樹は改めてまじまじとユーリーを見上げた。


「いや、だけど、嬉しいな。
 私、あなたの演奏が好きなんだ」

「僕もそう言ってもらえると嬉しいな」


にこにこと明るい笑顔。


「ぜひ、いい時に聞かせてくれない?」

「もちろん。
 なにしろ、こんなゴージャスなところに居候させてもらっているからね。
 お安い御用さ」


フェリックスは部屋のドアを開けた。


「行くぞ」

「おっと、待ってくれよ」
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