Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「基本的に死ぬのは恐くないのに。
 その前の痛かったり苦しいのは耐えられないんだ。
 だからちょっと今回は辛かったかな」


綺樹は天井を見上げた。

そしてフェリックスへ顔を向けた。


「おまえが構わないなら、隣で寝ないか?
 そのままの姿勢では眠れないと思うし、だからといって帰っていいよとは今の私には、とても言えないんだ。
幸い景気のいいことに、このベットはかなり広い」


最後はおちゃらけてみせた。

フェリックスは綺樹の顔をしばらく見つめていた。

眼と耳の手術のため包帯でぐるぐる巻きにされている。

綺樹はくちびるをの片端でにやっと笑った。


「安心して、襲わないよ」


フェリックスは鼻先で笑った。

綺樹を少し押しやり、ベットに横になった。

無理な姿勢で固まっていた筋肉が痛みを伴って伸ばされる。

一つ息をついて目を閉じる。

なんと長い一日か。

急激に眠りに引きずり込まれる。

最後に耳元で綺樹の声が聞こえたような気がした。

ありがとう、と。
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