Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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涼は日本を出る前に2か所だけ立ち寄った。
祖父の墓前と育ての親であるライナだ。
墓は、いい。
しゃべらないから。
問題はライナだった。
予定を伺う電話からして不機嫌で、会ったら怒っていた。
「ラナさん。
そうかっかしないでよ」
「悪いわね。
これが普通よ」
日本人にしては大きく、くっきりとした目がぎろりと睨む。
綺樹よりライナの方がよっぽどスペイン系の顔立ちだ。
涼はため息をついた。
「ところで、何に怒ってんの?」
「何にと思う?」
「覚えがありすぎて、検討が付かない」
ライナは諦めたように長く息を吐いた。